2023年7月9日に、東京駅近くのステーションコンファレンス東京にて、ピジョン奨学財団の新奨学生発表会・奨学生証授与式が行われました。小児科、産科、新生児科の医師を志す学生を対象としたピジョン奨学財団の奨学生は、2015年に第1回の募集をスタートし、今年で9年目です。2023年は、北海道から九州まで全国27大学の医学部5年生50名が新たな奨学生として選抜されました。
ここ数年は新型コロナウイルスの影響でオンライン参加の奨学生が多かったのですが、今年は多くの奨学生が会場に集いました。都合により会場に来ることができなかった奨学生と役員はオンラインで会場とリアルタイムにつないで、お互いの顔を見ながら授与式に参加しました。
第一部:新奨学生発表・奨学生証授与式
まずはじめに、代表理事の北澤憲政より挨拶がありました。
「ピジョン株式会社は社会における存在意義を『赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします』と掲げています。寄付された母乳をドナーミルクとして提供する母乳バンクの開設支援、植樹活動、中学生向け教育プログラム『赤ちゃんを知る授業』の提供などの社会的活動を行っていますが、これらは安心して出産し、子育てできる社会的基盤を作るための活動のひとつとして考えています。
赤ちゃんを生み育てやすい社会になるよう、奨学生の皆さんのこれからの活動に期待しています。」
続いて、評議員の仲田洋一から挨拶がありました。
「今年のピジョン奨学生は応募人数が多く、周産期医療を志す医学生が多いことをとてもうれしく思っています。応募された学生の中から、努力を重ね、優秀な成績を収めている50名の皆さんが選抜されました。大学5年、6年の2年間は、多くのことを吸収して自分の力としていく時期です。奨学生同士の横のつながりを作っていくことはピジョン奨学財団の大きな柱のひとつなので、会場参加の方も、オンライン参加の方も、積極的につながりを持つ機会をたくさん作ってください。」
次に、北澤代表理事より新奨学生50名の発表が行われ、一人ひとりの名前と大学名が読み上げられました。発表後に50人の奨学生を代表して、2人に奨学生証が授与されました。
評議員・理事・監事・選考委員より、新奨学生への期待と激励を込めたお祝いの言葉をいただきました。祝辞の一部をご紹介します。
「医師は患者のために最善を尽くしますが、1人の医師ではできないことが多いです。現在の医療はチームで行うもので、それは病院内だけではなく、行政や地域などの力も必要です。今後は横のつながりが非常に大切になってくるので、このピジョン奨学財団でのつながりを貴重な機会にして、将来に役立ててください。」(小児科医/片山啓評議員)
「SDGsには17のゴールがあります。1から16までは『こうありたい』というゴールがしっかり書かれているのですが、17の『パートナーシップで目標を達成しよう』だけは、ゴールではなく手段が書かれています。『パートナーシップ』が手段として明記されているということは、1人では何もできないということ。医療ももちろん同じで、現場では他の科の医師、他職種、企業や行政などと連携しながら動いています。奨学生の皆さんも、ぜひ自ら連携を生み出す人になって欲しいと思います。」(髙田誠評議員)
「周産期医療は、今後ますます社会的責任が大きい医学分野になっていくと思われます。例えば、近年は生活習慣病などの患者さんがとても増えていますが、周産期医療の領域でのケアにより、これらのリスクが大幅に下がることがわかっています。奨学生の皆さんにはこの観点でも周産期医療を見てほしいと思っていますし、この分野はまだまだ発展途上でもあります。今後の皆さんの努力に期待しています。」(産婦人科医/福岡秀興理事)
「赤ちゃんの出生数は、私が生まれたときの約半分まで落ち込んでいて、課題は山積みです。先輩医師の技術や経験を受け継ぐだけではなく、新しい課題を解決するために自分から動いてほしいと願っています。」(小児科医/張田豊選考委員)
「今回の選考にあたって、皆さんの応募書類からは、時代の苦労をものともしないパワーが伝わってきました。私はピジョンの開発部門で仕事をしていますが、社外の専門家の方々のご指導をいただきながら、商品づくりをしています。将来、奨学生の皆さんからピジョンの商品に対して忌憚のないご意見をいただけることを期待しています。」(黒石純子選考委員)
次に、新奨学生を代表して2名から、ピジョン奨学生としての決意表明の挨拶がありました。
「私は、妊娠出産に関する正しい知識を広く伝えていける産婦人科医になりたいと思っています。少子化対策に携わりたいと考え、不妊治療に関する活動にも取り組んできました。妊娠出産に関する正しい知識を持つ人が増えることは、愛情あふれる家庭で育つ子どもが増えることにつながると考えています。実習で最初に出産に立ち会った感動を忘れず、1人でも多くの方を幸せにできる産婦人科医を目指していきます。」(慶應義塾大学5年)
「子どもの頃に病気にかかりましたました。その時の主治医の先生に対して、この先生がいるから自分は病気が治るんだと強く思っていたことを覚えています。その時の経験から医師は小さな子どもにとって大きな存在になれることを知り、子どもに寄り添う小児科医を志すようになりました。今回、奨学生に選んでいただきましたが、同じ志を持つ仲間が集うことで、化学反応が起こり、さらにステップアップできる転機になると思っています。家族を見守り、子どもが健康に育つ手助けができるように、この会場にいる奨学生の仲間たちと切磋琢磨して頑張っていきたいです。」(旭川医科大学5年)
第一部の最後に、オンライン参加の奨学生と役員を会場参加者が囲むようにして、記念撮影を行いました。笑顔で1枚の写真に収まることができました!
■第二部:近況報告・グループセッション
第二部は、昨年から奨学生となっている6年生と、周産期医療の大先輩である役員の医師の先生方も参加し、情報交換や交流を深めるプログラムを実施しました。まずは自己紹介を兼ねた近況報告を、参加した6年生、5年生が1人ずつ行いました。留学予定や学会参加の報告などの学業に関することはもちろん、部活や旅行などで学生生活を楽しんでいる様子も報告してくれました。抜粋してご紹介します。
「5月に産婦人科学会に参加し、全国の学生と交流して刺激を受けました。来週から卒業試験が始まるので頑張ります!」(6年)
「資格を取るのが趣味で、この1年で電気工事士と無線の免許を取りました。」(6年)
「現在マッチング期間で、履歴書や小論文を書くことに追われています。8月には最後の西医体(西日本の医学部のスポーツ対抗戦)があるので、その練習にも励んでいます。」(6年)
「去年5年生で参加した時は、1学年上の6年生の先輩にこの会が終わった後にごちそうしてもらいました。今年は自分がごちそうできればと思っています。」(6年)
「今年の夏にスタンフォード大学に留学することが決まりました。早速奨学金を有意義に使うことができるので、ワクワクしています。」(5年)
「公衆衛生実習で鴨川に一週間行くことになっているので、今から楽しみにしています。」(5年)
「子どもの時に病気を患い、10年前までこども病院にお世話になっていたのですが、その病院に1週間実習に行きました。私のことを覚えてくれていた看護師の方もいて、すごくうれしかったです。」(5年)
「皆さんと刺激し合える環境に巡り会うことができて、とてもうれしいです。来年の3月からイギリスに留学を予定しています。」(5年)
「北海道の大学に通っていますが、出身は大阪です。この会場に来たら、高校の同期もいてビックリしました。来年の夏は大阪のサマースクールに行く予定なので、行く人がいたら声をかけてください。」(5年)
さまざまなことに励み、充実した学生生活を送っていることが垣間見えました。医学生は勉強や実習に忙しいですが、奨学生の皆さんはとてもパワフル!今後の活躍が期待できます!
続いて、10人ほどのグループに分かれて、グループセッションを行いました。各グループには役員の医師の先生方にも入っていただき、オンライン参加の奨学生もZOOMのブレイクアウトルームに分かれて、交流を深めました。
トークテーマは、「志望する科へ進むために、いま取り組んでいること」です。
ほぼ初対面にも関わらず、どのグループも互いの取り組みに興味深く聞き入り、終了予定時間になっても話し込む姿が見られました。同じ周産期医療を志す仲間として、連絡先を交換するなどピジョン奨学生同士のネットワークが作られたようです。最後にグループごとの記念撮影も行ったのですが、どのグループも笑顔があふれていました!
ピジョン奨学財団は、周産期医療の医師を目指す学生を経済的に支援するだけでなく、志を同じくする仲間との交流の場を提供することも大切な役割と考えています。ここでつながった仲間と実習先や学会で偶然一緒になり、さらに交流が深まったこともあるようなので、この出会いを大切にしてほしいと思います。
今後も、できる範囲ではありますが、定期的に交流の場を設ける予定です。ピジョン奨学財団の奨学生に選ばれたことを契機に、情報交換をしたり、悩みを共有したりして、お互いに切磋琢磨しながら目指す道に邁進して欲しいと願っています。