2023年12月に交流会を開催しました

全員の集合写真

2023年12月10日にステーションコンファレンス東京にて、ピジョン奨学財団の交流会が行われました。会場には、医学部に在学中で周産期医療に携わる医師を志しているピジョン奨学生の5年生28名、6年生14名が集まり、北海道から九州まで全国から奨学生が集合し、顔と顔を合わせて交流を深めることができました。他にも医師として活躍中であるピジョン奨学財団の評議員、理事、選考委員の12名の医師と、ピジョン奨学財団の奨学生の卒業生で現在研修医として活躍中の2名にもお越しいただきました。

第一部では、選考委員ならびに卒業生である医師の先輩方への質問会を企画し、奨学生からの疑問に対して、周産期医療の現場で各々の先生方が感じている率直な声をお聞きしました。

続く第二部では、医師の先輩でもある当財団の評議員・理事等の役員も参加し、さまざまな立場の医師からリアルな声を聞ける貴重な機会にもなった上、奨学生同士が交流して、横のつながりを深めることにもつながりました。

第一部:先輩医師への質問会

質問にご回答いただいた医師
東海林 宏道 先生
ピジョン奨学財団選考委員

順天堂大学医学部小児科学講座
先任准教授

張田 豊 先生
ピジョン奨学財団選考委員

東京大学大学院医学系研究科小児科学
准教授

ピジョン奨学財団 元奨学生(卒業生)
後藤 隆之介 先生

東京大学
2019年3月卒

妹尾 ゆり佳 先生

神戸大学
2022年3月卒

■初期研修について

司会:事前に奨学生の皆さんから寄せられた質問には、初期研修についての質問が多く集まりました。初期研修中はどのような仕事をしているのか、どんな生活をしているのか、教えてください。

第1部タイトル

後藤医師:東大の小児科重点プログラムで初期研修をしました。子どもをたくさん診ることができて、とにかく楽しい2年間でした。初期研修はすごく忙しいイメージがあるかもしれませんが、私の場合は自分の時間もあったので、将来はどういう方向に進みたいのか考えながら過ごすことができました。研究が好きなので、空いた時間は論文を書いたりしていました。

妹尾医師:私も大学の小児科コースです。3〜4人のチームを組んで、時間や担当は話し合って決めています。初期研修が4月に始まって、早速4日目から当直がありました。救急対応もある病院なので、そのときは大人も診療しています。

■研修医時代に大切なこと

司会:研修医のときにやっておくと良いと思うことは?

パネリストの先生2名

東海林先生:研修医はバックアップの先生が付いている状態でスタートできるので、何でも聞ける時期です。だからこそ、経験できるのにそれをためらうことは、もったいないと思います。バックアップの先生がいるうちに、たくさん経験を積んでください。

張田先生:年齢を問わず、できるだけいろいろな先生と接してほしいです。いろいろな働き方をしている先生がいるので、そこをしっかり見てほしい。忙しくなると周囲3mぐらいしか目に入らなくなりがちですが、それはもったいないと思います。

後藤医師:今は後期研修医3年目なので、今年がしっかり指導していただける最後の年と思っています。東海林先生からも“研修医はバックアップの先生がいる”というお話がありましたが、初期研修に比べ、後期研修に入ったあたりからだんだん指導されることが少なくなると思います。研修医という立場を活かして、積極的に質問して自分の医療行為に対してフィードバックをもらうようにすると良いと思います。

妹尾医師:たくさんの経験をすることが大事だと思っています。実際の症例で勉強できるので、たまにしかやらない手技を行うときに見せてもらったり、救急対応の実例を見たり聞いたりしています。

司会:周産期以外の診療科での研修では、どのようなことを心がけていましたか?

後藤医師:私は元から小児科を志していましたが、自分の志望する診療科以外を勉強できる最後の機会です。他科のことは専門の先生に教わらないとわからないことが多く、貴重な機会だと思って学んでおくと後で役に立ちます。

妹尾医師:私も小児科を志していますが、小児科希望だと伝えると、若年層の患者のときに呼んでもらえるなど配慮してもらえることも多いです。ぜひ積極的にアピールしてください。

■マッチングについて

司会:マッチングについての質問もとても多かったです。どのような基準で初期研修先を選びましたか?

パネリストの研修医2名

後藤医師:小児科に進むことを考えていたので、まず小児科が強い病院を探しました。また、大学の先生と研究プロジェクトをいくつか進めていたので、そのまま研究を続けることを考えて、卒業大学の病院に決めました。また、給与や勤務地、自分の時間が確保できるかどうか、そのあたりのことはしっかり考えると良いと思います。

妹尾医師:私も小児科希望だったので、小児をしっかり診られること、そして救急を経験できることをポイントに探しました。見学した病院は6〜7ヵ所行きましたが、そこでは先生方の雰囲気を感じながら、自分がやっていけるかどうかという視点で見ていました。

司会:マッチングの見学先でここだけは見たほうが良い、というポイントはありますか?

後藤医師:待遇について教えてもらうと良いと思います。あと、寮がある場合は、病院によってかなり差があるので見ておいたほうが良いですね。

妹尾医師:学生の皆さんは忙しさが気になると思うのですが、「忙しいですか?」と漠然と聞くと、人によって忙しさの基準が違うので、自分にとっては忙しいと思うスケジュールでも「全然大丈夫だよ」と答えられたり、その逆もあったりすると思います。例えば「勤務時間は何時から何時までですか?」というように、具体的な数字を聞くことをおすすめします。

司会:ご自身をどのようにアピールしましたか?

後藤医師:私の場合は研究に力を入れていたのでその話をしましたが、学生のうちから輝かしい業績がある人は、そんなにいないと思います。それよりも先輩の先生方といろいろな話をして仲良くなって、自分のことを知ってもらうことが大切だと思います。

妹尾医師:私も学生のときにやってきたことと、小児科への強い想いをアピールしました。でも、後で話をしてみると、話し方や雰囲気、笑顔で選んでいるとハッキリおっしゃる先生もいたので、コミュニケーションを取ることが一番だと思います。

■仕事とプライベートについて

司会:仕事とプライベートの両立についての質問も数多くありました。女性医師も増えていますが、結婚や出産についてはどのように考えていますか?

パネリスト

東海林先生:アドバイスできることといえば、理解あるパートナーを見つけることが大事だと思います。出産しても当直をしている先生もいますし、いろいろな働き方があります。どのような働き方でも、お互いを尊重し合うことが大切。今はそういう時代だと考えています。

張田先生:院内保育園など、育児をしながら仕事を続ける制度がいろいろあります。結婚や出産の時期は人それぞれですし、子育てはとても大事な仕事だと思いますが、医師の仕事に戻らないのはもったいない。医師は、自分に合った働き方を見つけながら続ける価値がある、やりがいのある仕事だと思います。

妹尾医師:私自身は今年の10月末に結婚したばかりです。後期研修に入ると同期の数が減りますし、仕事も忙しくなるので、出会いの場が減ってしまいます。結婚する将来像が明確なら、早く結婚するのも良いのではないでしょうか。

後藤医師:妹尾さんと同じ初期研修2年目に結婚する人は多かったですね。後期研修に入ることを考えると、良いタイミングなのかもしれません。

■大切にしていること

司会:医師という仕事をするにあたり、大切にしていることを教えてください。

会場の様子

東海林先生:「迷ったら面倒な方を選ぶこと」です。簡単な方を選んで、その結果があまり良くない状況になると、対応が後手後手に回ることになるので、面倒だと感じる方を選ぶことを心がけています。

張田先生:私は小児の腎臓病を専門にしています。そのため、治療は長期になり、慢性疾患として抱えながら成人することもあります。しかし、自分は病気だからとマイナス思考になるのではなく、治療を通して、いろいろなことができる自分の可能性をわかってもらうことを心がけています。独立した大人になってほしいと思いながら、診療しています。

後藤医師:小児科は患者の家族のことも考える必要があります。慢性疾患の治療を考えるときには、この家庭で治療を継続するにはどうすれば良いのか、常に気を付けています。

妹尾医師:大人とは違って、子どもは症状を言葉にすることが難しいです。言葉以外のところをよくみるようにもしますし、普段子どもをよくご覧になっているご家族の話を聞くようにしています。

■学生のうちにやっておいたほうが良いこと

司会:5、6年生の奨学生たちは、学生生活も残り少なくなってきました。学生のうちにやっておいたほうが良いことはありますか?

参加者と壇上のパネリスト

東海林先生:統計学です。研究成果を出すときに統計的な知識が必要になるので。あとは英語ですね。若いときにもっとやっておけば良かったです。統計学も英語も、40歳過ぎると、なかなか頭に入ってこなくなります…。

張田先生:私は学生時代に何もしていなくて…統計学も大学院に入ってから必要を感じて勉強をしました。今は好きなことをすれば良いと思います。働きながらでもいろいろできますし、必要になったらやるしかないので、あまり焦らなくても良いと思います。

後藤医師:医学以外の分野の勉強でしょうか。統計学はもちろん、プログラミングもやっておくと役に立ちます。

妹尾医師:私も英語をもっと勉強しておけば良かったと思います。英語しか話せない患者さんも来るので、今から英会話もやっておくと役に立ちます。

■進路を選択した理由

司会:進路はどのような考え方で決めましたか?

会場の様子

東海林先生:最初から明確なビジョンがあったわけではなく、いろいろな科を回りながら決めた感じです。子どもは治療した後の人生が長いところにやりがいを感じて、選びました。

張田先生:私の時代は、先を見据えたプログラムがあるわけではないので、好きなことを見つけたら、そこをどうやって進んでいくか?ということを考えました。今も好きだから小児科をやっています。好きになれるものが見つかると、それが進路になります。

後藤医師:高校生のときに自閉症センターでボランティアをして、そこで小児医療に興味を持って医学部に入りました。しかし、実際にどんなキャリアを歩むか考えると、やっぱり好きなことをとことんやっていくしかないと思います。私の場合は臨床の場で経験を積むうちに、慢性疾患を持つお子さんを診ることに関心があるとわかりましたが、それも最近のこと。熱中できることを見つけるには時間がかかります。自分が続けたいことは、やってみないとわからないので、まずはいろいろな経験を積むことが大切です。

妹尾医師:私は別の大学の薬学部で基礎研究をしていました。基礎研究も大事ですが、自分は目の前の人と関わっていくことが好きだと気づき、医学部に入り直した経緯があります。小児科に進むことを見据えて入学しましたが、今も子どもの発達を支えていくことにやりがいを感じています。私も慢性疾患を持つお子さんを長く診ることにやりがいを感じているので、将来はその分野に進みたいです。

■奨学生への応援メッセージ

司会:最後に奨学生へのメッセージをお願いします。

  • メッセージを送るパネリスト
  • メッセージを送る研修医パネリスト

東海林先生:経験をたくさん積むことで、自分が何に興味があるのかわかってきます。そこで見えてきた自分の興味を大事にして、進路を決めてほしいですね。奨学生の皆さんとは学会などで会える機会があるのと思うので、楽しみにしています。

張田先生:私たちが学生の頃と皆さんの時代では、日本の構造が大きく変わり、課題も変わっています。これからの新しい時代は皆さんが作っていくので、先人たちが歩んできた道や声は参考にならないかもしれません。これからの道は、面白いと思って取り組むからこそ、開けてくるもの。面白いと思うことに注力して、新しい課題を解決してほしいと期待しています。

後藤医師:先生方からも何度もお話がありましたが、好きなことをやっていれば、将来はなんとなく見えてくると思います。頑張ってください。

妹尾医師:今はまだ臨床をするイメージが湧かないと思いますが、小児科の診療は本当に楽しいので安心してください。一緒に働くことを楽しみにしています。

第二部:近況報告会・グループ交流会

第二部ではピジョン奨学財団の役員である医師も加わって、食事を楽しみながら交流を深めるプログラムを実施しました。はじめに、北澤代表理事より乾杯の挨拶がありました。

挨拶をする北澤代表理事

「本日はたくさんの奨学生に集まっていただき、とてもうれしく感じています。出生数が低下し続けている中、ピジョンとしては子どもを生みやすい社会を作っていかなければならないと考えています。そのためには、皆さんの力が必要。みんなで集まってコミュニケーションを取る今日のこの機会を大切にして、関係性を築き、今後に活かしてください。」

奨学生による近況報告では、それぞれ自己紹介とともに楽しいトークをしてくれました。今回は、コロナ禍以前のように海外留学をする奨学生が増えてきたことが印象的でした。抜粋してご紹介します。

  • 近況報告をする参加者
  • 近況報告をする参加者
  • 近況報告をする参加者
  • 近況報告をする参加者

「4月にロンドンの病院で実習させてもらうことが決まりました。今は一生懸命英語を勉強しています。」(5年)

「来年、ミシガン大学に派遣されることになりました。奨学金を活用して視野を広げたいです。」(5年)

「進路を考えているのですが、小児外科と小児科で迷っています。5月と6月に留学予定なので、じっくり考えたいと思っています。」(5年)

「私は他大学を卒業後に編入したのですが、あと1年ちょっとでついに社会人になってしまいます。今はやりたいことをやろうと、英語やフランス語を勉強しています。」(5年)

「来年の6月にアメリカとイギリスに留学する予定で、楽しみにしています。」(5年)

「9月から2ヵ月間、フィンランドで実習をしてきました。勉強以外では、フィンランドでマラソンの10kmレースで優勝しました!2月末には大阪マラソンに出るので、練習を頑張っています。」(6年)

「マッチングも卒業試験も終わり、今は国家試験に向けて心穏やかに勉強しています。国家試験の後の卒業旅行を楽しみに頑張ります。」(6年)

「ピジョン奨学財団の交流会は5年生のときから参加しています。今回4回目にして初めて、自分の通う大学の先生にお会いできたので、たくさん話を聞きたいです。」(6年)

奨学生にとっては気になるマッチングの情報交換も、奨学生同士盛んに行われていました。また、参加していただいた医師である当財団役員の先生方も、奨学生からの質問に気さくに回答し、奨学生はたくさんの有益な情報を得られたことと思います。

  • 交流会の様子
  • 交流会の様子
  • 交流会の様子
  • 交流会の様子

最後は板倉業務執行理事より、締めの挨拶がありました。

挨拶をする板倉業務執行理事

「ピジョンという会社は、安心と安全という面において、親御さんから信頼していただいている会社です。安全についてはいろいろな手を打てますが、安心は心の問題です。経験を積むことで、人として安心できる言葉を、患者さんやそのご家族にかけてほしいと思います。皆さんの活躍を期待しています。」

奨学生同士は初対面でも、志を同じくする同士として、すぐに意気投合して打ち解ける様子が見受けられました。大学の垣根を超えたピジョン奨学生同士のつながりは、研修医になっても貴重なネットワークになるので、今後も交流を深めていってほしいと思います。奨学生の皆さんがこの日に出会った仲間とのつながりを大切に励まし合いながら成長し、周産期医療の現場で活躍することを楽しみにしています。