2019年7月に新奨学生発表会・奨学生証授与式・交流会を開催しました

2019年7月21日に、東京丸の内のフクラシア丸の内オアゾにてピジョン奨学財団の新奨学生発表会・奨学生証授与式・交流会が行われました。小児科、産科、新生児科の医師を志す医学部の5,6年生を対象としたこの奨学金制度は、従来の首都圏、関西圏、中部圏の指定校大学に加え、今年から東北、北信越地域にも拡大。この日は日曜日ということもあり、忙しい勉学の合間を縫って、全国からピジョン奨学財団の奨学生が集まりました。また、現役の医師らが務める財団の評議員・理事・監事・選考委員も集い、貴重な交流の場にもなりました。

■第一部:新奨学生発表会

まずはじめに、代表理事の北澤憲政より挨拶がありました。「財団設立後、5年目となる今年の新たな奨学生は、これまでで最多の23大学、51名となりました。また、この交流会にも例年よりも多くの奨学生に参加していただき、とてもうれしく思っています。現在、世界的に母となる女性の精神的・肉体的負担は大きく、それが赤ちゃんの低体重出生や母乳の質低下の恐れなど、さまざまな方面に悪影響を及ぼしているとも言われています。奨学生の皆さんには、勉強に思う存分に取り組んでいただき、これらの問題を解決に導く役割も果たしてほしいと願っています。」と、奨学生への期待を述べられました。

続いて、新奨学生が発表となり、2019年4月より新たな奨学生となった現5年生51名が紹介されました。

新奨学生の発表の後は、評議員・理事・監事・選考委員より、これから小児科・産科・新生児科を目指す新奨学生へ、祝福と歓迎の言葉をいただきました。現役の医師である評議員・理事からは、

「小児科医、産科医の仕事は、朝、赤ちゃんの回診をすることから始まります。赤ちゃんのかわいらしい様子から一日を始めることができる、とっても楽しい仕事です。今、周産期医療の世界は人手不足ですが、この楽しい現場に来てくれることを、心待ちにしています。」

「生活習慣病などあらゆる不定愁訴のオリジン(発端)を考えると、妊娠中や新生児の環境までさかのぼる、と言われています。つまり、周産期医療は、すべての医療の基本。日本の将来が、みなさんの努力にかかっています!厳しい世界ですが、ぜひ頑張ってください。期待しています。」

「周産期医療は、臨床も研究も奥が深く、仕事の面白さがありますし、社会貢献的にも非常に意味があり、やりがいのある現場です。私がもう一度医学生に戻っても、産科を選びます。みなさんの志の高さ、選択に敬意を表します。」

と、周産期医療の現状を踏まえ、奨学生への期待をたっぷりと込めた熱いメッセージが送られました。

また、新奨学生の代表2名からも挨拶がありました。周産期医療を志した理由や、今後への決意が語られました。

「新聞記者として働いていたのですが、取材を通して、子どもとその家族への支援がいろいろな側面で必要だと感じました。より具体的に子どもに関わる課題解決に貢献したいと考えたのが、小児科医を志した理由です。ピジョン奨学財団は経済的な支援だけでなく、他大学の仲間や役員の方々と顔を合わせて交流する機会を作っていただけることに、感謝しています。」(横浜市立大学5年)

「産科の実習でお産の瞬間に立ち会い、新たな生命の誕生に心を動かされました。母子健康で生まれることは、当たり前ではなく難しいこと。チーム一丸となって難題に取り組む産科に魅力を感じ、ぜひその一員となって貢献したいと思っています。」(東京慈恵会医科大学5年)

■第二部:交流会

新奨学生発表会の後は、昨年奨学生となった6年生も加わり、立食での交流会となりました。評議員の山下茂より乾杯の音頭が取られ、学生同士、学生と評議員・理事・監事・選考委員の間で、食事をしながらのフリートークとなりました。

交流会では、奨学生による近況報告も行われました。まず奨学生となって2年目の6年生が壇上に並びました。

「昨年のこの会で、志が高い先輩たちの話を聞き、とても刺激になりました。私も今年、ガーナに実習に行って産科の病棟を回ってきました。もともとアフリカ医療に興味があったのですが、行くことができたのは奨学金のおかげです!ありがとうございました。」(横浜市立大学6年)

「奨学金を活用して、アメリカと中国に臨床実習に行くことができました。ここで出会った奨学生の皆さんと学会で再会することを楽しみにしています。」(名古屋大学6年)

「オーストラリアの病院に実習に行きました。オリンピックにも関わりたいと思っているので、この経験を活かしたいです。」(東京医科歯科大学6年)

「奨学金のおかげで、アメリカの小児がん専門病院に見学に行くことができました。もともと小児血液医療を目指していたのですが、よりその思いが強くなりました。」(筑波大学6年)

と、ピジョン奨学金を活用し、留学など勉強に打ち込む学生生活を送っている様子が報告されました。

新奨学生となった5年生は、周産期医療を志した思いや、奨学金への感謝を報告しました。

「実習で出産に立ち会い、命が生まれる瞬間に感動して、産科を希望するようになりました。海外研修に興味があるのですが、お金がかかるのでどうしよう?と思っていたところ、奨学生に選んでいただき、本当に感謝しています。来年、アメリカへの研修が決まったので、知見を深めたいです。」(岐阜大学5年)

「生物学を学んでいましたが、もっと人を知りたい、人に貢献したいと医学部に編入しました。妊娠を通した母体の変化に興味があり、産科か母性内科を志望しています。」(大阪大学5年)

「病院見学で、子どもたちが日々悩んだり、喜んだりする様子がとてもいとおしく、また退院する時のうれしそうな顔が忘れられず、小児科を希望するようになりました。奨学金のおかげで、週3回のバイトを週1回に減らすことができました。」(群馬大学5年)

また、この日の交流会で話を聞いた内容を活かしたいとの声も多く聞かれました。志を同じくする他大学の学生や現役の医師と交流できる貴重な機会となったようです。

「他大学で哲学を学んでいましたが、直接人を助ける仕事をしたいと考え、医学部に編入しました。女性の一生に関われる仕事として、産科を希望しています。今日の交流会は素晴らしい場なので、大学に戻ったら後輩たちに伝えていきたいと思います。」(日本医科大学5年)

「長期入院している高校生に勉強を教えるサークルを立ち上げ、活動しています。今日の交流会の機会を活かし、勉強やサークル活動へのモチベーションを上げたいです。」(東北大学5年)

「普段はなかなか他大学の方と話すことがないですし、同じ科を希望している人も少ないので、本日の交流会は良い機会となりました。志の高いみなさんから刺激を受けました。」(京都大学5年)

近況報告の後、板倉正業務執行理事より、「医療の現場は厳しく、これから歩む道は困難なことも多くあると思いますが、それを承知して道を突き進んでいく奨学生のみなさんに敬意を表します。赤ちゃんは大きな可能性を秘めています。皆さんの力で赤ちゃんを全面的にサポートする環境を作っていただきたいと思います。」との挨拶があり、中締めとなりました。

今後、奨学生のみなさんがこの交流会で出会った仲間とお互い励まし合い、勉学に励むことで、医療の現場で将来活躍する人材になることを願っています。