2019年12月に交流会を開催しました

2019年12月8日に、ピジョン奨学財団の交流会が行われました。この交流会は年に2回行われ、全国から5、6年生の奨学生が集まり、さらに現役の医師や財団の評議員・理事も加わって、貴重な交流の場となっています。

今回の交流会は、初の試みとして研修医として奮闘中のピジョン奨学財団の卒業生の方々にも忙しい勤務の合間を縫って駆けつけていただき、卒業生によるパネルディスカッションを行いました。自らの近い将来像のような先輩方のリアルな経験談やアドバイスを聞く奨学生たちの表情は真剣そのもの。質問も積極的に飛び出し、熱気あふれるディスカッションとなりました。

第一部:パネルディスカッション

パネラー

鈴木さん(女性):東京医科歯科大学2019年卒
落合さん(男性):昭和大学2019年卒
河野さん(男性):順天堂大学2018年卒
平野さん(男性):慶應義塾大学2018年卒
諌山さん(女性):筑波大学2018年卒
阪本さん(女性):順天堂大学2018年卒
山田さん(女性):東京医科大学2019年卒

■周産期医療に関わる医師を目指したきっかけ

鈴木:私は別学部を卒業後、一度働いてから医学部に再入学しました。もともと、産科の先生に憧れて医師を志しました。医学部5年生のときに各科で実習する機会をいただき、産科に一番興味があるなと思いました。

落合:小学校5年の時に妹が生まれたのですが、しばらくNICUに入っていました。妹が入院している時はもちろん、その後の通院でも小児科の先生方と関わることが多く、自分も子どもの病気に向き合う医者になりたい、との思いが自然と芽生えました。新生児医療に関わりたいと考えています。

河野:母が薬剤師をしていて、医療は小さい頃から身近にありました。私は途上国で医療支援をしたいという目標があり、そこで母子保健が求められていることを知り、産科か小児科に進みたいと考えるようになりました。産婦人科には、内科・外科、両方の要素が含まれているところが魅力的であり、やりがいのある分野だと感じています。

平野:子どもが好きで、漠然と小児科に進みたいと考えていましたが、勉強していくうちに産科に学問的な興味を持ちました。実習で産科に行くと、他の先生方の雰囲気が自分と合う人が多く、ここで働きたいと思えたのも志望理由のひとつです。

諌山:医療ドラマを見て、その時の周産期の先生の役が好きだったので、興味を持ちました。5年になって研修で産科に行った時、分娩に立ち会わせていただいたのですが、鉗子分娩など難しい出産現場を見て、本当に感動して産科に行きたい!と強く思いました。また、実習に行った大学病院の先生方がとても熱心に精力的に働いている姿を見て、私もここで働きたいと感じました。

阪本:私は小児科医を希望しています。理由は、小さい頃にお世話になった先生に憧れていること、そしてシンプルに大人を見るよりも子どもを見ていた方が楽しいからです。

山田:私も小さい頃に喘息でお世話になったので、医者として自分のような子どもに寄り添いたいと思い、小児科を希望しています。小児科は呼吸器、循環器など、様々な分野に関われることも魅力です。でも最近、産科も面白いと思い始めて、悩んでいます。

■奨学金の使い道

司会:奨学金はどのように活用していましたか?

鈴木:奨学金は学費、生活費、交通費として使わせていただきました。実習で時間に余裕のなかったアルバイトをせずに済んだのは、奨学金のおかげです。

諌山:アメリカのフロリダに6週間実習に行く際の渡航費と生活費になりました。

落合:私は部活でアイスホッケーをやっていたのですが、道具にお金のかかるスポーツなんですよ。奨学金の助けもあって良い防具を買うことができたので、私の手足が無事なのはピジョン奨学財団さんのおかげです!

司会:本日集まっていただいた5年生のみなさんが気になっていることといえば、研修先とのマッチングだと思います。卒業生の皆さんは、どのような準備をしましたか?

平野:私は先輩に「初期研修での志望科の数ヵ月の経験は大きな差にならない」と言われました。実際にその通りだと思います。むしろ初期研修でしかできない他科の経験は貴重ですし、そこで何を学びたいか、目的をしっかり持てるかどうかが大事だと思います。

河野:自分も大学の系列外に出ようと思っていたので、5年の夏から動いて、10か所ほど行き、候補を絞り込んだら改めて2週間ずつ見学しました。自分の中で選ぶポイントを決めていて、ひとつは平野くんと同じように雰囲気で、自分と似たような考え方をしている先生方が多いかどうか。ふたつ目は、研修医のうちに救急を経験したかったので、救急をやらせてもらえるかどうか。そして最後に、立地です。東京から離れた病院を希望していたのですが、その理由は東京は専門分野が分かれているのでひとりの患者さんでも別々の病院にかかっていたりしますが、地方なら症例がすべて集まってくるので、患者さんの全体像が見えると考えました。

鈴木:私は自分の大学のプログラムで研修したいと思い、別の病院の見学にはほとんど行きませんでした。大学のプログラムでは、1年目は関連病院、2年目は大学病院という研修プログラムもあるかと思いますが、関連病院の見学には行っておけば良かったかなと思っています。

■初期研修での経験

司会:研修先では産科、小児科以外で勤務されている先生も多いと思いますが、今の経験は今後にどのように活かせそうですか?

河野:時間がなく情報もない中で対応しなければならない救急は役立ちますね。産科志望ですが、妊婦さんの急変を診ることも多いと思うので。

阪本:自分から「小児科を希望している」と主張すると、関連するところを見せてくれるようになります。麻酔科や外科の研修では、小児オペばかり入っていました。

落合:時間のあるときは、入院中の患者さんの話を聞きにいくようにしています。産科や小児科はナイーブなところがあるので、話を聞く練習になると思っています。

司会:ここで、5年生の皆さんから質問を募りたいと思います。皆さんが悩んだり疑問に思っていることは、他の参加者の方も同じように考えていると思うので、質問がある方は、ぜひこの機会に!

■初期研修先について

5年生:「小児科を希望しているのですが、研修先は小児科に強い病院に行った方が良いのでしょうか?」

諌山:医者という職業は短期決戦ではないので、あまり関係ないと思います。他の科のプログラムに魅力を感じたら、そこを選んだ方が良いのではないでしょうか。

阪本:私も小児科希望ですが、あえて小児科以外の科が充実している病院を選びました。例えば、耳鼻科や皮膚科は、小児科医になっても必ず診る病態なので、研修医のうちにしっかり見ておこうと思いました。

平野:私は先輩に「初期研修なんて誤差だから」と言われましたし、実際に入ってみてその通りだと思います。2年の初期研修で何をやりたいか、目的をしっかり持てるかどうかが大事だと思います。

■進路相談は

5年生:「研修先など、今後の進路について、誰かに相談しましたか?」

落合:産科の先輩には小児科について、小児科の先輩には産科について、それぞれに話を聞きました。自分とは違う科のことを聞けば、本音が見えるかな?と思ったので。

平野:自分の大学内だけではなく、このピジョン奨学生の交流会で出会った他大の同期など、いろいろな人に話を聞きました。決めるのは自分ですが、選択肢から選ぶときの知識や情報は多い方がいいと思います。

阪本:私もアルバイト先の先輩や他大の友だちに「3年目はどうする?」などと聞いています。自分の大学だけでなく、外に広げて話を聞くことが大事だと思います。

山田:私はマッチングの動き出しが遅くなってしまい、6年になってから探し始めたんです。焦っていたのですが、そんな時に頼りになったのがまさにこのピジョン奨学財団の交流会で出会った他大学の友人でした。「どこに見学に行った?どうだった?」と聞きまくりました。本当に助かりました!

■ピジョン奨学財団の奨学生同士のつながり

司会:ピジョン奨学生同士の繋がりが役に立った、というお話が聞けて嬉しいですね!他の皆さんも、奨学生仲間との繋がりはありますか?

鈴木:私は交流会には毎回参加して、とても刺激を受けていました。あまり繋がりは意識していなかったのですが、今日のお話を聞いて、私も繋がっておけばマッチングで困っている時などに助けてもらえたのかな、と少し後悔しています。

平野:私はほぼ参加していました。他大学との横の繋がりを持てることはなかなかないですし、志望する科が同じ同期、先輩、先生方と話ができるので、すごく貴重な機会です。

諌山:学会やサマースクールでまた会えたりして、同じピジョン奨学生同士だと盛り上がりますよね。

阪本:私も研修に行った時に、「あれ?見たことある!」と思ったら、ピジョン奨学生の交流会で会ったことがある同期で、話が弾みました。

山田:先ほども話しましたが、本当にマッチングの時にはここで繋がった同期にお世話になりました!そして今日も、今まで小児科希望だったのですが、今は産科にも魅力を感じて悩んでいるので、いろいろと情報収集しようと思って来ました。この後の交流会もよろしくお願いします。

司会:貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。ピジョン奨学生の横の繋がりが貴重だというお話も伺えましたので、またこの後の交流会で親睦を深めていただければ幸いです。

第2部:交流会

パネルディスカッション後には、パネラーとして登壇したピジョン奨学財団の卒業生7名、昨年奨学生となった6年生、今年度新たに奨学生となった5年生、財団の評議員・理事が一堂に会し、立食で食事をしながらの交流会が行われました。まず始めに仲田洋一評議員より乾杯の音頭があり、その後はフリートークに。学生同士で情報交換が行われたり、学生が積極的に周産期医療の第一線で活躍されている評議員・理事の先生方に質問をしている様子が見られました。

交流会では、ピジョン奨学財団の卒業生、6年生、5年生の近況報告も行われました。それを機会に、志を同じくする仲間とさらに具体的な話が弾んでいたようです。中締めの後も、閉場時刻ギリギリまで連絡先を交換するなど、横の繋がりを積極的に作っていました。今後、奨学生の皆さんがこの機会に出会った仲間と交流を深め、お互い励まし合いながら、目標とする周産期医療の現場で活躍してほしいと願っています。