2020年9月に新奨学生発表会・奨学生証授与式を開催しました

挨拶をする北澤代表理事

2020年9月13日に、東京駅のそばにあるフクラシア丸の内オアゾにて、ピジョン奨学財団の新奨学生発表会・奨学生証授与式が行われました。小児科、産科、新生児科の医師を志す、医学部5年生50名が、新たに奨学生となりました。本来ならば、全国からピジョン奨学財団の奨学生、現役の医師らが務める財団の評議員・理事・監事・選考委員が一同に集い、交流を深める場となるはずでしたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、半数以上の奨学生はオンライン参加となりました。しかし、会場参加の奨学生だけでなく、オンラインでつながった奨学生たちもリアルタイムでコミュニケーションできるプログラムを組んだことで、貴重な交流の場となりました。

第一部:新奨学生発表、奨学生証授与式

北澤代表理事

まずはじめに、代表理事の北沢憲政より挨拶がありました。

「2020年、私が社長を務めるピジョンは、会社の存在意義を『この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします』と掲げました。この想いに基づき、より多くの早く小さく生まれた赤ちゃんにドナーミルクを届けられるよう、9月には日本で2番目となる母乳バンクの施設を当社1階に開設しました。これにより、約600名の早く小さく生まれた赤ちゃんにドナーミルクを届けられる予定です。また、最近では出産費用を全額政府の負担にしようとする動きも出てきました。このように、これからの時代は赤ちゃんをより大切にする流れになっています。周産期医療を志す皆さんには、今後ますます大きな期待がかけられることと思います。本日はおめでとうございます。」

仲田評議員

さらに、評議員の仲田洋一からも挨拶がありました。

「2020年は、誰もが経験したことのない世界となりました。今後も未経験なことが起こるでしょうが、これまでの経験を生かして乗り切っていければ、必ず素晴らしい将来が待っています。専門性を深め、頑張ってください。」と、奨学生を激励しました。

  • オンライン参加のみなさん
  • 来場したみなさん
  • 証書の授与
  • 証書の授与

続いて、新奨学生の発表がおこなわれました。2020年4月よりピジョン奨学財団の奨学生となったひとりひとりの名前と大学名が読み上げられると、会場内の奨学生もオンライン参加の奨学生も、笑顔で返事をしてくれました。

その後は、評議員・理事・監事・選考委員より、新奨学生へのお祝いの言葉をいただきました。オンラインで参加した評議員や理事からも、将来の周産期医療の担い手となる奨学生へ、期待を込めたメッセージが寄せられました。

  • 新奨学生へのお祝いの言葉
  • 新奨学生へのお祝いの言葉

*一部をご紹介

「少子化で子どもが減ってきていますし、コロナの影響でさらに出産が減ることが予想されています。ということは、生まれてくる赤ちゃんは今まで以上にかけがえのない大切な存在。周産期医療は、世界の子どもたちのために働く素晴らしい仕事です。この仕事を目指す皆さんが、初志貫徹して医師となり、医療の現場で再び会えることを楽しみにしています。」(新生児科医/加部一彦理事)

「赤ちゃんは、転びながらおすわりをしたり、歩こうとしたり、その生きざまはチャレンジの連続。見ていると、とても励まされます。私は赤ちゃんを見ない人生は、楽しみを半分失うようなものだと思っているくらい、やりがいのある仕事です。皆さんと一緒に仕事をすることを楽しみにしています。」(小児科医/小林正久選考委員)

「先が見えない、不安な時代です。だからこそ、この環境の中で妊娠、出産、育児をする人たちは不安がどんどん大きくなっています。皆さんがこれから学んでいくことが、親となる人の不安を取り除く手助けになるはず。そんな皆さんを、これからもピジョン奨学財団はバックアップして応援していきます。」(板倉正業務執行理事)

  • 新奨学生へのお祝いの言葉
  • 会場の様子

また、ピジョン奨学財団の奨学生同士の出会いやネットワークをこれから大切にしてほしいとのアドバイスもありました。

「ピジョン奨学財団は、奨学金を支給して金銭面の援助をすることだけが目的ではありません。大先輩となる医師の先生方や同じ志を持つ仲間と出会う場を提供することも、大きな目的です。遠くの目標に到達したいときは、仲間と一緒に頑張ることが大切。ここにいる50人の仲間を大切に、喜びや苦しいことを共有して、高い目標を目指してください。」(山下茂評議員)

「ピジョン奨学財団の奨学生は積極的な学生が多く、ここで出会った縁を生かして、横浜から神戸の私のクリニックまで研修に来た学生もいました。同じ奨学生というネットワークは、医者として働いていくうえで大きな力になります。この出会いを大切にしてください。」(小児科医/片山啓評議員)

次に、新奨学生を代表して2名から、ピジョン奨学財団の奨学生としての抱負や決意の表明がありました。

新奨学生代表者の挨拶

「大学の部活動で、血友病を持つ子どもたちをサポートする活動をしています。子ども自身は遊びたい盛りに外で遊べないといった苦しさがありますし、ご家族のご負担も大変なもの。この活動を通し、具体的に問題解決ができる立場になりたいと思い、小児科医を志しました。ピジョン奨学生として、同じ道を目指す仲間たちと交流する場をいただき、感謝しています。」(東京医科大学5年)

新奨学生代表者の挨拶

「私は小児救急医を目指しています。大学のサークルで入院中の子どもたちが『夢の花火』というテーマで描いた絵を、本物の花火にして打ちあげるボランティア活動をしているのですが、その時に鑑賞していた入院中のご家族が『これが家族で見られる最後の花火になるかも』と話していたのを聞き、小さな子どもたちが死と隣合わせで生きていることに大変なショックを受けました。また同時に、そうつぶやいていたご家族の背中が、この道を志す動機となりました。今後も、感受性豊かな医師になれるように、努力を続けていきたいと思います。」(筑波大学5年)

オンライン参加と会場参加のメンバーでの集合写真オンライン参加と会場参加のメンバーでの集合写真

第一部の最後には、オンライン参加でスクリーンに映し出された奨学生とピジョン奨学財団の役員が一緒に記念撮影を行いました。オンラインで各自宅からと会場と物理的に離れていましたが、心をひとつに、全員が集合した記念写真を撮影することができました。

■第二部:質問会

第二部では、現役の医師である理事に奨学生が質問をする「質問会」が行われました。奨学生たちが志す小児科、産科の大先輩の「医師」に直接話を聞ける貴重な機会とあって、さまざまな質問があがりました。理事は自分の経験を踏まえながら、丁寧に、そしてユーモアを交えて回答し、とても盛り上がった質問会となりました。寄せられた質問の中から、抜粋してご紹介します。

  • 会場にあつまった奨学生からの質問にこたえる理事 会場にあつまった奨学生からの質問にこたえる理事
  • オンライン参加の奨学生からの質問にこたえる様子 オンライン参加の奨学生からの質問にこたえる様子

<質問会に参加した理事>

加部一彦理事:埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター 新生児部門教授
林良寛理事:良寛こどもファミリークリニック院長
田角勝理事:たつのシティタワークリニック診療所長 昭和大学小児科学講座客員教授
福岡秀興理事:早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構規範科学総合研究所招聘研究員 千葉大学客員教授 福島県立医科大学特任教授

奨学生:小児科、産科ならではの魅力とは?

加部理事:日本の新生児医療は世界トップクラス。重症だった子が元気になってお家に帰って、遊びに来てくれると本当にうれしいです。今、一緒に働いている医師は、私が当直の日に780gの低体重児で生まれた子なんです。医学部に進んだということは噂で聞いていたけど、新生児医療をやりたい、一緒に働かせてほしいと電話がかかってきました。孫と働いているみたいなんですよ。

福岡理事:産科は手術が多いので技術が上がること。また、内科的な知識も必要になるなど、カバーする範囲が広いことが面白さですね。広く女性の健康を守る仕事なので、やりがいがあります。

田角理事:どんな科にも、魅力はあります。自分自身で面白さを発見していくことが大切です。

林理事:赤ちゃんは右肩上がりなんですよ。同じ状態が続けば、必ず良くなるところが魅力ですね。私の年になると、現状維持は下がっていく一方なんですけど・・・・。

奨学生:学生時代にやっておいたほうが良いことは?

加部理事:医師は生涯勉強し続けなければならない職業です。その範囲は、医学だけではありません。幅広い興味を持ち続けられるように、見聞を広めてほしいです。

福岡理事:医師は体が資本なので、鍛え方や栄養の知識など、体のことをよく知ってコンディションを整えられるようにすることです。

田角理事:実習は、何もかも新鮮で、学ぶことが多いと思います。ひとつひとつの経験を大切にしてください。

林理事:大学を卒業すると、忙しくて医学界の人としか関わらなくなります。私は学生時代に非常に数多くのアルバイトをやって、いろいろな人と関わりましたが、その経験は大切だったな、と今は思います。学生のうちがチャンスなので、いろんな人と関わるようにすると良いと思います。

奨学生:どんな人が小児科医、産科医として成長しますか?また、どんな人が向いていますか?

加部理事:受験や試験など、学生のうちは目の前に正解がありますが、臨床現場に行くと決まった答えがないことが多いです。時には、正解がないことがあるかもしれない。そんな時のために、何かに頼るのではなく、自分自身の頭で考えられる人が向いていますね。

福岡理事:向いてない人なんていません!若さは力、素晴らしいです。

林理事:何もできないんだけど、とにかくその場を離れない人は伸びましたね。状況が悪くなると、サーッといなくなる人もいるのですが、そんな時でも場を離れない人。つまり、何事も逃げない人が伸びると思います。

田角理事:人は誰でも得意なこと、不得意なことがあります。そこを見極めて、自分の特性が活かせるところを専門にすると伸びると思います。

他にも、小児科、産科を取り巻く社会的な課題などの専門的な質問や、今後の進路についての質問もありました。現場で活躍している医師ならではの声を聞くことができ、奨学生にとって貴重な時間となりました。

  • 質問会での様子 質問会での様子
  • オンラインで参加の学生に話をする林理事 オンラインで参加の学生に話をする林理事
  • 質問会での様子 質問会での様子
  • 質問会での様子 質問会での様子

新型コロナウイルスの影響があり、多くの学生がオンライン参加となった新奨学生発表会でしたが、ピジョン奨学財団は奨学生の皆さんが同じ志を持つ奨学生や現役の医師の方々と交流し、ネットワークを広げる場を設けることも、大切な役割と考えています。コロナ禍でできる範囲ではありますが、今後も定期的に交流の場を設ける予定です。新生児・小児・産科などの妊産婦医療にたずさわる医師を志す医学生の皆さんがピジョン奨学財団の奨学生に選ばれたことをきっかけに、今まで以上に勉学に励み、将来医療現場で欠かせない人材へと飛躍されることを期待しています。