2020年12月13日に、ピジョン奨学財団のオンライン交流会が行われました。今までの交流会は、年に2回、全国から奨学生が集まり、周産期医療に携わる現役の医師、財団の評議員・理事も加わって交流を深めていましたが、今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮し、オンラインでの開催となりました。39名の奨学生に加え、研修医となった10名のピジョン奨学生のOB/OGにも参加していただきました。
今回の交流会は、外出や実習が制限され、コミュニケーションが難しくなっている状況だからこそ、リアルタイムに情報交換をし今後のキャリア形成に役立ててもらうことを目的としてプログラムを考えました。奨学生同士で悩みを共有したり、OB/OGが自身の体験を踏まえたアドバイスを送ったり、貴重な交流の場となりました。
第一部:卒業生による座談会・奨学生近況報告
第一部では、参加した奨学生をいくつかのグループに分け、そこに卒業生2名ずつとファシリテーター役の事務局が入り、奨学生からの質問に答える形式で「座談会」を行いました。一定時間で卒業生が入れ替わり、奨学生は10名全ての卒業生に質問が出来、様々な話を聞くことが出来ました。また、卒業生が入らない時間帯もあり、そこではお互いの近況報告を行いました。
奨学生からは、初期研修先の選び方、研修先を決断する時期など、進路についての質問が数多く寄せられていました。また、結婚、出産を経験し、育児をしながら研修医をしているOB/OGには、家庭と仕事の両立についての質問も多数ありました。卒業生は、出身大学はもちろん、初期・後期研修の勤務先の病院も、大学病院勤務・市中病院勤務・こども専門病院勤務等さまざまで、さらに勤務先の地域も色々なため、幅広く経験談を聞くことができました。座談会で寄せられた質問を一部ご紹介します。
■初期研修の病院を決めた理由
奨学生:初期研修の病院を決めた理由は何ですか?
「最初は大学の医局に入ることも考えましたが、その場合は他の医局を見る機会がなくなると思いました。自分の大学だけではなく、他の病院はどうなっているのかを知りたいと思ったのであえて大学病院ではなく、市中病院を選びましたが、とても良かったと思っています。やはり現場に出ないとわからないことが多い。全く違う文化を体験させてもらっています。」
「さまざまな大学から人が集まってくることが決め手で、他大の医局を選びました。自分の大学だけに閉じこもらずに、いろいろなバックボーンを持った人と研修をしたいと考えたからです。」
「私は出身大学の医局に入りました。環境を変えずに、研修に専念したかったからです。また、合併症があるなど、リスクの高い妊婦は大学病院に集まることも理由のひとつです。」
「初期研修の2年間、環境を変えずに同じところで研修ができることにこだわって探しました。また、結婚をして家庭があるので、給与にもこだわりました。」
■研修先の違い
奨学生:小児科医を目指しています。研修先として、大学病院、市中病院、こども専門病院とありますが、どのような違いがありますか?
「市中病院は基礎疾患のある子は少ないですが、一般的な症例をたくさん見ることができます。逆に大学病院、こども専門病院は基礎疾患のある子が多く、専門性を高めることができます。大学病院は医局からの派遣で市中病院に行くこともあるので、両方経験したい人には良いかもしれません。ただ、これはあくまで傾向であって、これに当てはまらない病院もたくさんありますので、実際に病院に行って自分の目で確認したほうが良いと思います。」
■研修先決定の時期
奨学生:最終的に研修先を決断したのは、いつ頃でしたか?最近は早まっていると聞くので、不安があります。
「人気の科は早めに埋まってしまうことがあるようですが、小児科や産科は11月まで悩んでも大丈夫だと思います。」
■子育てと仕事の両立
奨学生:子育てと仕事はどのように両立していますか?
「私は出身大学の病院で初期研修をしましたが、毎年研修中に出産する人はいます。そんなに特別なことではなくて、意味のない残業をするような文化はなく、定時に帰ることもあります。でも、病院によるかもしれませんので、しっかり事前にリサーチしたほうが良いと思います。」
「研修医もフル回転で働かないと仕事が回っていかない病院もあります。そうなると子育てとの両立は厳しいかもしれないですね。病院によって研修医の働き方はまったく違うので、必ず見学に行って見極めてください。」
第二部:フリートークセッション
第二部では、奨学生と卒業生を少人数ずつランダムにグループ分けし、フリートークセッションを行いました。フリートークセッションも短時間で何回かランダムにグループを変え、色々な人とざっくばらんなトークをしていました。
ピジョン奨学財団は、新生児・小児・産科などの妊産婦医療にたずさわる医師を志す医学生を、奨学金で支援するだけでなく、奨学生の皆さんが同じ志を持つ仲間とネットワークを広げ、将来共に切磋琢磨できる仲間を見つける場を提供することも大切な役割のひとつと考えています。新型コロナウイルスの影響で、オンラインでの交流会になりましたが、今後の医師への道を改めて決意し、多くの仲間から刺激を受ける場と感じてくれていたら事務局一同嬉しく思います。コロナ禍においては、今後もできる範囲の実施方法となりますが、定期的に交流を深める場を設けていきます。そしてお互いに励まし合いながら、医療の現場で活躍する人材へと成長されることを願っています。