ピジョン奨学財団 奨学生インタビュー
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赤ちゃんの人生のスタートに立ち会えることは産科医の大きな魅力

平塚先生ポートレート 東京都内大学病院勤務
平塚先生

−−医師を志した理由は?

多くの人に貢献できる仕事をしたいという考えから、漠然と研究職に憧れていました。その中でも人に一番身近な研究は医療系だと思い、医師を志しました。

−−産婦人科を選択した理由は?

日本の医療における課題の中に少子化や不妊治療がありますが、不妊症の研究と臨床の繋がりに興味を持ち、産婦人科を意識するようになりました。基礎研究の賜物である体外受精は年々増え続け、今では約14人に1人が体外受精で生まれています。
一方で、実習で産婦人科を回った時に、お産の現場は研究とはかけ離れた場で、人と人との関わりの素晴らしさや大切さを感じました。お産をもっと深く知りたいと思ったことも、産婦人科を選択した理由のひとつです。

−−医師として大切にしていることは?

お産の主役はご本人ならびにご家族であるということです。コロナ禍で立ち会い出産ができない時期もありましたが、お産は家族の関わりが変化したり改めて思いやるきっかけとなったりする大きな出来事ですので、できるだけ立ち会ってほしいと考えています。もちろん色々な方・色々な家族がいらっしゃいますが、赤ちゃんが生まれると、パートナーが感動して泣いたり、お母さんを労ったりといった様子が見られ、「家族って良いなあ」と思います。自分自身も妻の出産に立ち会った時は、ものすごく感動し、妻への感謝の気持ちが溢れました。
また、妊婦健診は、妊婦さんにとってただの医療機関の受診というだけでなく、「赤ちゃんが元気かどうかをちゃんと確認できる」「不安なことを医師に直接聞くことができる」という貴重な場だと思って来てくださっていると思います。妻の妊娠出産を当事者として見てきた経験も活かし、出産を控える家族に寄り添い安心してもらえるように心がけています。

勤務中の様子

産婦人科医としての仕事の魅力、やりがいは?

産科の診療は基本的に未来へ拓けていくポジティブな診療であるということです。長い不妊治療があったり、妊娠中にトラブルがあったり、過程がどんなに大変でも、赤ちゃんが無事に生まれ親子で一緒に家に帰ることになった時、産科は卒業となり新しい生活・人生がスタートします。1ヶ月健診が終わればもう会えなくなるので寂しいですが、これからそれぞれの人生を歩んでいく姿を見られることは、この仕事の大きな魅力です。
また、AIなどの技術がどんなに発達しても、人間がお産に向き合わなければならないことには変わりありません。これからも絶対に必要な診療科であり、価値のある仕事だと思います。

−−ピジョン奨学生になった理由は?振り返ってどのように感じますか?

周産期医療を志す医学生を対象とした奨学財団なので、奨学生に応募することそのものが自分の目指す道を深く考えるきっかけになりました。周産期医療や生殖医療の道に進みたいという意思を自分自身で再確認し、応募しました。
奨学生になったことで、他大の産科志望の人とつながることができました。同じ大学には産科志望の学生が少なくてどんな人が志望しているのか全然知らなかったですし、女性が多い診療科に進むことに不安を感じていました。でも、奨学生交流会に参加したら、産科志望の男性が多くてとても心強く感じました。

−−今後、力を入れたいことや目指していることを教えてください。

不妊症に対する生殖医療は進歩してきましたが、未だ手を尽くしても中々妊娠しない難治性不妊の患者さんがいます。不妊期間が長くなると、夫婦の日常生活で、不妊治療が生活の中心を占めてしまうことがあります。これはとても辛く大変なことだと思います。
例えば着床不全は診断や治療法が確立していないのが現状であり、メカニズム解明と根拠を持った治療法の開発が急務です。そこで、現在は大学院に進学し着床に関する研究を行っています。今は、指導してくださる先生に考え方を学びながら土台から研究を学んでいますが、将来は自らが具体的な課題やテーマを見つけ、それを解決して患者さんに貢献していけるような医師になりたいと思っています。